Satoryu's Diary

Rubyが好きなプログラマーの日記。日々の生活、開発に関するメモとか考えとか。


2016年05月19日

_ Kanban Casual Talks に行ってきた。 #カンバン仕事術

クジ運の無い皆様、こんばんわ。 滅多にないクジ運を全力投入して当選したので、ガッツリ最前列で話を聞いてきました。

訳者の吉羽さんと原田さんのプレゼン、そしてカンバンを全社的に使っているヴァル研究所の新井さん、訳者の方々のパネルディスカッション*1に最後はワークショップ、更に途中でbeerpizza が付いて無料のイベントですから驚きです。オライリーさん、まじオライリーさん。

要するに、控えめに言って、業務を改善したければカンバンによる見える化が最強ということです。

「カンバンのキホン ~始めるのをやめて、終わらせることを始めよう~」 吉羽龍太郎

カンバン仕事術の手っ取り早い読み方と、どうやってカンバンで見える化するプロセスと応用についての話でした。 もちろん書籍にはより濃密に書かれているのですが、本書を読んだあとに軽く振り返るのにとても良さそうな資料になってると思います。

僕が一番好きなのは、プレゼンのタイトルにも含まれてるし、書中でも最初に出てくる

始めるのをやめて、終わらせることを始めよう

です。ほんと、これが全て。

「それって本当にカンバン?」 原田騎郎

簡単なゲームを通して、本当のカンバンとは何なのか?という衝撃的事実*2の話でした。

やったゲームはこんな感じ。

  • 8名ほどが1列にならぶ。
  • 端から端までチョコレートを1個ずつ渡していく。
  • 1人1個までしか持ってはいけない。
  • 自分の手持ちが無くなった時、左隣から1個取れる。

なので、右端の人が1個取られると、全体が動き出すという仕組み。 こういった仕事の流れはプル型のワークフローと呼ばれるもので、モノが必要となった時に必要なものを生産する方式です。テンポ*3良く1個ずつ右へチョコレートを渡していく中、突然のルール変更。それは、

  • 4番目の人と5番目の人の間の距離を遠ざける

というもの。1個ずつ渡すには遠すぎる距離になったため、テンポが崩れ、5番目の人の後に待ちが発生しました。ここで登場するのがレジャーで利用する何の変哲もないプラスチック製のカップが2つ。このカップにある程度貯めて、距離の開いた4番目と5番目の間でやりとりをします。そうするとテンポがまた生まれる。

で、この中で何がカンバンなのか? てっきり自分はチョコレートがタスクであり、そこを流れていくこの全体のフローがカンバンなのだと思っていました。 ですが、途中で出てきたプラスチック製コップが実はトヨタ生産方式で出てくるカンバン。そして、今我々がカンバンと言っているものとトヨタ生産方式のカンバンは異なるものということで衝撃を受けたわけです*4

今回のこのゲームだと完全なpull型なのでWIP制限などいらず、無くなれば作る、をくりかえせば良いのですが、普段のソフトウェア開発はpush型なのでWIP制限が必要になる。 というところから自分の理解が追いついていかなくなった… 分かっていないけれど、制約理論、そして途中で紹介していただいた下記の書籍を参考にすると良いそうです。

「全部門にカンバンを導入した10の理由と活用事例」 新井剛

開発部門全体で、ではなく全社です。 総務でカンバンをKPTで使っているというお話は、昨年のXPまつり2015のLTで聞いたのですが、非常に良い取り組みだと思いました。 ヴァル研究所さんの事例は、単に見える化しただけでなく、そこから仕事を楽しくしていったところが素敵です。 付箋を千羽鶴にしていったり、絵を書き込んで行ったり、ニコニコカレンダーのステータスが揃ったらラーメン食べに行ったりなど、ちょっとしたことかもしれませんが業務の達成感だけでない楽しさを生み出しています。また、そこに女性が活躍しているところも良い職場の雰囲気であることを感じます。

パネルディスカッション

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「俺ら訳者だけど、なんか質問ある?」といった感じで、普段コンサル頼んだら忙しくていつになったら相談できるのかわからないくらいの人たちを、その場で独占(?)してQ&A形式で行われました。ファシリテーターは角さん。

  • Q: マルチファンクショナルなチームというけれど、全員がフルスタックになってしまいそう。それでいいの?
    • A: 必要なスキル全てを全員が持つ必要はない。防がなければいけないのは、あるスキルが特定の人に依存してしまうこと。そこが複数人でカバーできているのであればそれで十分。
  • Q: 続けていくとKPTなどに慣れてしまってマンネリ化してしまう。どう防いだらいいか?
    • A: あえて止めてみる。例えば、物理のカンバンをやめてみると、そこで物理のカンバンの良さに気づくことがある。またはその逆も。
  • Q: やっぱり電子ツールより物理のカンバンが良いのか?
    • A: 所詮はツールなので、使う人次第。電子ツールを使う際には、チーム内での規律を作り、それを守ることが大切。
  • Q: KPT以外になにをするか?
    • A: アジャイルレトロスペクティブズという良い本があるので参考にしましょう。【PR】
    • A: KPTの方法を3つくらい持っておいて、毎回変えてみるとそれぞれの違いでメンバーから出てくるものが変わってくる。慣れてきたら場面に合わせて使い分けてみる。
      • Tryの出し過ぎは注意。本当にやりたいことに注力することが大事。

ドットゲーム

13章に出てくるドットゲームを5〜7人のチームに分かれて実際にやりました。 どんなゲームかは書籍を買いましょう。このゲームを通してわかるのは、WIP制限を設けることでチームの処理能力が格段に変わるということです。 個人的には、自分が担当したのがひたすらに出来上がる成果物の時間を測ることでして、どういった変更やメンバーの気づきを見ながら、タイムが改善されていくのを目の当たりできたのが面白かった。見える化したら、メトリクスが出来るようになるし、それがあるからフィードバックもできるんだなぁ、と。

さいごに

かつて電子ツールから物理のカンバン(スプリントボード)に移行したときのことを考えると、チームの状況や本当にやることややらなくていいことが見えるようになったのはとても良かったのを覚えています。 カンバン仕事術は、それを思い出させてくれるし、どのようにしてワークフローを導き出し、タスクを完了にまで流す力学の原理が書かれています。ですので、まだ物理のカンバンを試していない人も是非手にとって読んでみてください。

おまけ

カンバン仕事術で見える化ができたら、それをもっとカスタマイズしたくなるはずです。 そんな時にはアジャイルコーチの道具箱という本がありますので、そちらも御覧ください。

Tags: 勉強会

*1 という名のコンサル無料お試し会

*2 個人的にはこの日の一番の衝撃

*3 このテンポをタクトタイムと言うそうな。

*4 そもそも自分がちゃんとトヨタ生産方式を勉強せずに思い込みがあったというのがいけないのですが


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